5.BIRD Product Corporation
 
Bird 8400 STi 
1.特徴(図III-5-1)
 バード社は1960〜1970年台にかけて、Bird mark 7, mark 7A, mark 8などに代表される簡便な機構による圧サイクル方式のベンチレーターシリーズで一世を風靡した。その後、IMV BirdやBaby Birdを発売しているが、あくまでも簡易な機構の延長上の製品であった。Bennett 7200やBear-5を開発した頭脳集団の一部はバード社に流入し、1987年にはBird 6400STを、1990年にはBird 8400STをリリースし、バード社はハイテク人工呼吸器メーカーに変貌した。Bird 8400STは、呼気弁構造のさらなる改良、呼気ガス流量測定機能の内蔵、無呼吸バックアップの機能の追加を行い、1993年にはBird 8400STiを発表した。これにはフローサポートシステムやグラフィックモニター(オプション)も装備された。現在バード社はThermo Electron社に買収されている。BEAR社もAllaid Health Care社に買収されていたが、最近Thermo Electron社に買収された。両社とも親会社が同じになったので、将来は機種の合理化、統合、それに伴う代理店の変更、混乱が予想される。しかし次期モデルは両者の技術が融合する可能性がありこれは楽しみである。
2.性能
1)利用できるモード
 Control/Assist    
 SIMV+PSV
 CPAP(PSV/PEEP)
 CPAP(Flow support system)
---------------------------------
+VAPS
+PCV
+Apnea ventilation
+PEEP
 
2)基本データー
システム作動間隔時間...4 ms
最大吸気ガス流量
  強制換気............120LPM
  PSV.................120LPM
吸気ガススルーレート...?L/s
最大強制換気数......... 80 BPM
最大SIMV回数........... 80 BPM
 
3.制御回路、制御機構
1)制御機構の概説
 マイクロプロセッサーには80C31が個使用されている。これらはメイン、ディスプレー、モーター制御に使われている。吸気バルブ制御、ディスプレー情報は、直接デジタル的に制御される。センサー情報や呼気弁制御はA/D変換やD/A変換を通じてデジタル的に処理される。
2)機械的機構の特徴(図III-5-2)
 ニューマティック回路を、チューブ配管を使わず、アルミダイキャスト構造で構築している。電気回路のプリント基板による配線と、同じ発想である。これにより、チューブや接続部の経時劣化によるトラブルの減少、製造工程の簡略化、品質管理の簡素化、製造コストの低減、保守の簡便化を実現した。
3)ガス流量計測
a)吸気側
 吸気バルブの位置とバルブの前後圧から、既存のデーターよりバルブを通過するガス流量を推定する。
b)呼気側(図III-5-3)
 可変口径積膜(Variable orfice membrane)を利用した差圧式のセンサーが使われている。センサーのコネクター部分には、個々のセンサー毎に工場で計測された較正情報がオプティカルコードで記載されている。この情報はMPUに読み込まれる。なおセンサーの特性は数百万サイクル以上使用しても変化しない。
4)吸気バルブ
 吸気バルブは、ステッパーモーターによる駆動で、ほぼ1LPM/stepの精度である。
5)呼気バルブ(図III-5-4a,b)
 従来の、ガス圧でバルーン弁を駆動する間接駆動方式を脱却し、バルブメンブレンを電磁ドライバーによって直接駆動する方式を採用している。 駆動電圧は全開より全閉まで256段階に調整される。
4.ニューマティック回路(図III-5-5)
 外付けのBird3800マイクロブレンダーで、希望の酸素濃度に調節する。ブレンダーを通過した高圧ガス(35-75 psi)はガス入力(1)より本体に供給される。機械保護の為に過剰圧100psiの逃がし弁(3)が付く。ガス入力フィルター(2)で水滴やゴミを除去した後、貯蔵タンク"Accumulator tank"(4)で混合ガスを蓄える。ブレンダーの供給能力は90LPM以上であるが、貯蔵タンクを経る事で120LPM以上のピークガス流量を可能にする。この混合ガスはレギュレーター(5)で20psiまで減圧され、安定化される。吸気バルブ(サーボバルブ)(7)の作動に伴いパルス状のガスが流れるが、この影響がレギュレーター(5)に及ばないようにパルス吸収器"Pulsation dumper"(6)が設けられている。吸気バルブ(7)はステッパーで駆動される。ここで電気的にバルブ開度を調整して、通過するガス流量を調節し、吸気ガスを発生する。安全弁"Safety valve"(12)は機械の故障時に作動する、呼吸回路用の大気開放弁である。呼気弁(9)は、電磁コイルによって呼気弁膜"Valve membrane"をダイレクト駆動する構造になっている。駆動電流はマイクロプロセッサーにより調整される。
 抵抗"Restrictor"(14)(15)(16)は気道内圧感知用の回路のパージ流(Purge flow)を形成する。三個のパージ弁"purge valves"(19)の内、一番上のは0点較正用で入力をショートする働きをする。他の二つは、差圧トランスデューサー"Differential Pressure Transducer"(20)の入力を流量センサー(21)に接続する、センサー回路にパージ流を流す、を切り換える。
 通常状態では、流量センサー(21)とトランスデューサー(20)は継がっているが、およそ60秒ごとに(吸気相の時に)トランスデューサー(21)のふたつの入力端子をショートしてゼロ校正をする。また、この間にセンサーライン"Transducer pressure sensensing lines"に5.0LPMのパージ流を通してライン内の水滴凝集を防ぐ。Bird 6400STの呼気弁では、ステッパーモーターの回転運動によりカムが呼気弁膜"Valve membrane"を駆動する方式が採用されていたが、Bird 8400STでは電磁コイルによりシャフトが呼気弁メンブレンを直接駆動する。これにより応答性が良くなり、バルブ全開時の呼気抵抗も減少する。
5.制御ソフト
1)トリガー方式/フローサポート/フローマッチング(図III-5-6)
 圧トリガー方式と流量トリガー方式が選択できる。Bird 6400 STで使われている近位圧センサーチューブ(proximal airway pressure tube)はBird 8400STiでは省略されている。
 フロートリガー方式(フローサポート)を選択するには、専用のセンサーを本体に接続することで自動的に切替わる。この際、回路内に10LPMの定常流が流れる。ASSIST/CONTROLやSIMV、PSVでは、呼気相での吸気バルブの出力(定常流量)は変化しない。患者の吸気が始まりると吸気流量の分だけ呼気側のガス流量は減少する。吸気流量(=吸気側のガス流量ー呼気側のガス流量)がトリガーレベルに達するとASSIST/CONTROL、PSVが送られる。吸気中は定常流は停止し、呼気弁は閉じられる。呼気相になると再び10LPMの定常流が流れる。呼気側のガス流量は定常流に患者の呼気ガスを加えたものになる。トリガー感度は1〜10LPMの範囲で選べる。CPAPではYピース部で検出した吸気流量の分だけ吸気バルブの流量が増量される。結果的に如何なる時相でも呼気弁に10LPM以上のガスが流れる(=フローマッチング)。しかし患者が呼気になっても吸気側の流量は10LPM以下には減量されない。フロートリガーとフローマッチングを総称して、フローサポートシステムと命名している。
2)ASSIST/CONTROL
 通常のsCMVと同じである。VAPSを付加できる。
3)SIMV
 トリガーウィンドーは可変時間方式である。強制換気にはVAPSを付加できる。
4)PSV
 PSVでの吸気終了認識条件はピーク流量の25%である。最大吸気時間は3秒に制限されている。他には制限条件はない。
5)PCV
 PCVをONにすると強制換気が圧換気でおこなわれる。ASSIST/CONTROLモードではPCVになり、SIMVモードではSIMV(PCV)になる。いづれの場合でも、1回換気量の設定が換気圧の設定になり、吸気ガス流量の設定が吸気時間の設定になる。VAPSを付加した場合は、換気量の表示もPCレベルの表示もアクティブになる。
6)VAPS(Volume Assisted Pressure Support)
 VAPSはVolume ventilationとPSVを重ね合わせた新しい換気方法で、両者の利点を合わせ持つ。1994.4より新しく加えられた機能である。詳細はII.人工呼吸モードの概念と基本設計 L .VAPSの章を参照。
7)無呼吸バックアップ
 無呼吸時間(Apnea interval)が設定値(10〜60秒に設定可能)を経過するとバックアップ換気回数(0〜80回/分で設定可能)でSIMV方式の換気をする。その後連続して二回自発呼吸が検出されて、しかもそれらの換気で、呼気換気量が設定一回換気量の50%以上であれば、自動的にアラームが止まり、元の換気条件に戻る。
8)SIGH
 SIGHも選択できるが、メニューは固定されている。150%の換気量で100呼吸に1回SIGH が入る。また最高Sigh圧アラーム(Sigh pressure limit)は最高圧(Pressure limit)の1.5倍になる。
9)バッテリー駆動
 DC 12vで作動可能、この際最大5A消費する。
10)データー出力
 RS 232でデーターを出力できる。
11)PEEP補正(PEEP compensator)
 呼気ガス流量にかかわらず、呼気抵抗が最小になるように、また、PEEP/CPAP圧が正確に維持されるように、気道内圧と基準PEEP/CPAP圧との誤差に基づき、サーボ制御により呼気弁の開度を調整する。
12)Auto-PEEPの測定
 Holdのボタンを押すと、吸気・呼気弁が閉じて、Auto-PEEPを測定できる。
6.操作体系(図III-5-7)
 完全なデジタル機でありながら、アナログ感覚のつまみを回すだけの操作になっている。つまみの機能に重複はなく、設定項目ごとに、それぞれに対応したつまみと数値の表示がある。
7.モニター、アラーム機能
 以下の項目がある。
(1)高圧(1〜140cmHO)
(2)低ピーク圧(off, 2〜140cmHO)
(3)低PEEP/CPAP圧(-20〜+30cmHO
(4)低分時換気量(0〜99.9g/分)
(5)過呼吸(3〜150回/分)
(6)無呼吸(10〜60秒) 
(7)低入力ガス(17psig)
(8)機器作動異常、電源異常、供給ガス圧異常
8.ディスプレー機能(図III-5-8)
 標準状態では呼気分時換気量、一回換気量、実呼吸数、I:E比の内一つを数値表示できる。
 オプションのHAWKEYEを装備すれば、気道内圧、換気量、流量の内波形をモニターできる。それ以外にも圧/ボリューム、フロー/ボリューム曲線を表示できる。また、各種トレンドも表示できる。
9.患者回路構成、加湿器(図III-5-9)
 加湿器にはTransmed 社のHPD 3000もしくはF&P428が用意されている。
10.メンテナンス
1)バクテリアフィルター
 フィルターはオートクレイブのみ可能。呼気の流量測定ユニットのセンサーは物理的に強くないが、熱や化学薬品には耐えるので、薬液やオートクレイブによる滅菌が可能である。
2)呼気弁周辺
 呼気弁膜は1000時間で交換。呼気流量測定ユニットはディスポではなく、数100万サイクル使用可能である。
11.定期点検
1)1,000 時間ごと
 ガス入力フィルターを点検し、必要なら交換。呼気弁膜も交換。
2)3,000時間ごと
 圧トランスデューサーの精度を点検し、誤差があれば、較正する。
3)5,000時間ごと
 バクテリアフィルター(Main flow,Proximal airway)を交換する。この時間内でも抵抗が大きくなれば交換。
4)15,000時間ごと
 オーバーホールを受ける。
12.欠点
(1)
(2)
Bird 6400ST
1.特徴(図III-5-10)
 Bird 6400STは人工呼吸器に求められる最低限の基本性能を具現化した機器であるが、まだ、Bear-5の影を引きずったストリップバージョンの段階である。ハードの中で問題の多いフロートランスデューサーを(避けて)省き、SIMV+PSV機能に特化している。しかしBird 6400STでは呼気バルブには、直接駆動という新しい方式が提唱されている。従来のマッシュルームバルーンをガス駆動する方式は、PEEP/CPAPを簡単な機構で実現でき、ニューマティック制御時代では「定番」の機構であった。ところがこの機構はガスによる間接駆動なので、応答性の改善に限界があった。8400STでは呼気弁駆動機構が電磁方式(アナログ)になり、より高速化された。吸気バルブの形式も順次変更を受け、VIP Birdでは分解能が大幅に改良される。
 Bird 6400STでは未解決であった呼気ガス流量測定機能もBird8400STでは正面より取り組まれ、Bird 8400STiでは、さらにフロートリガーやフローマッチングが行われ、より高度の吸気ガス制御技術が実現されている。
 気道内圧を近位圧モニターチューブを用いて、患者回路のYピース部位で測定するのは、Bear社の好きな手法で、原理上は望ましい機構であるが、患者回路が複雑になる欠点がある。Bird 6400STではまだこれを引きずっているが、上位機種のBird 8400では不可欠ではないので、これに決別している。しかし、VIP Birdになるとガス制御の精度上、再び装備される。
2.ニューマティック回路(図III-5-11)
 ガスのながれは8400STとほとんど同じであるが、呼気弁駆動装置(9)はステッパーによる直接駆動方式である。近位圧モニターチューブも設けられている。
 
 
T Bird AVS III, AVS II, AVS, VSO2, VS  
1.特徴(図III-5-12)
 高圧ガス源を吸気弁で調節して吸気ガスを発生させる機構はレスポンスの迅速さと、患者のさまざまな換気要求に応えられる柔軟性によって、現在では人工呼吸器の機構として標準的と考えられている。しかし、バード社の新しい人工呼吸器T Birdでは、タービンを電動モーターで駆動して吸気ガスを発生させる斬新な機構が採用されている。タービン技術にはジェットエンジンの制御技術が流用されていると聞くが、全く異なる分野の頭脳が、企業とか業界とかの垣根を超えて、開発費を投資してくれる環境を求めて自由に移動していくアメリカ流の良い面がこの人工呼吸器に具現されている。この機構により、エアー配管を必要としない、高流量、ハイレスポンス、低コスト、移動可能な人工呼吸器が実現した。VAPSやPCV、グラフィックディスプレー対応などあらゆるオプションを搭載するのがAVS IIIで、これよりVAPS、PCVを省いたのがAVS II、さらに呼気ホールド、MIP/NIFを省いたのがAVS、さらに吸気ポーズや吸気波形より矩形波のオプションを省いたのがVSO2である。VSO2よりデジタルブレンダーを省いたのがVSである。つまり位置づけとしては、AVS IIIは最上位のクラスに属するフルオプションの機器である。VSO2には病棟用と在宅用の2つの性格があり、病棟用としてはベーシックモデルであるが、ほとんどの症例ではこれで充分とも言える性能を有する。一方、在宅用としては現在市販されている人工呼吸器の中では最高性能である。VSは完全に在宅用である。しかし、これらの機器の基本的な機構や性能は同じで、たとえVSであってもSIMV+PSV+PEEPが可能である。このように1台の機器で、救急車からICUへ、ICUから一般病棟へ、そしてそのまま在宅へ、人工呼吸器を切り替えることなく対応可能な点が、T Birdの最大の特徴である。
2.性能
1)利用できるモード
 Control/Assist    
 SIMV+PSV
 CPAP(PSV/PEEP)
 ---------------------------------
+VAPS(SIMV, Assist/Controlモード)
+PCV(SIMV, Assist/Controlモード)
+PEEP
 
2)基本データー
システム作動間隔時間...4 ms
最大吸気ガス流量
  強制換気............140LPM
  PSV.................180LPM
吸気ガススルーレート...?L/s
最大強制換気数......... 80 BPM
最大SIMV回数........... 80 BPM
 
3.制御回路、制御機構
1)制御機構の概説
 メインプロセッサーにはintel 386 EX(48MHz)が、I/Oプロセッサーには80C32が使用されている。これらにより、タービン、呼気弁、ディスプレーが集中的に制御されている。
2)機械的機構の特徴
 ニューマティック回路は単純そのもので、ブレンダー、タービン、呼気弁と3ヶの圧センサーより構成される。タービンの回転上昇にはタイムラグがほとんど存在しないが、厳密に言えば吸気バルブ方式に比べるとやや緩やかで、グラフィックディスプレーで見ると吸気圧は経時的に直線的に上昇するのが判る。あたかも立ち上がり時間(rise time)調整機能を持つ人工呼吸器で比較的急激な設定にしたのと同等になる。制御系の優秀さを反映し、オーバーシュートはほとんど認めず、きれいな圧カーブをえがく。吸気終末で圧上昇を軽微に認める傾向があるが、一般的に圧制御を完全におこなうことはきわめて困難で、T-Birdのようなきれいな圧波形はめったに見られないのも事実である。
3)ガス流量計測
a)吸気側
 吸気ガス流量はタービンの回転数とタービン内でのガス圧縮量により決定される。タービンでのガス圧縮量を決定するために差圧センサーが設けられている。タービンの回転は光学式のエンコーダーで検出されているので、タービンが送り出したガス量は正確に推定できる。
b)呼気側(図III-5-13)
 呼気弁ボディーと一体化したセンサーが設けられている。可変口径積膜(Variable orfice membrane)を利用した差圧式のセンサーで、センサーのコネクター部分には、個々のセンサー毎に工場で計測された校正情報がオプティカルコードで記載されている。センサーの特性は数百万サイクル以上使用しても変化しない。
4)吸気バルブ
 吸気バルブに相当するのがタービンで、タービンの回転によりあらゆる換気モードが作り出される。
5)呼気バルブ
 バルブメンブレンを電磁ドライバーによって直接駆動する方式である。
4.ニューマティック回路(図III-5-14)
 5種類の流量に調整された電磁弁のON/OFFの組合せにより(デジタルブレンダー)、希望の酸素濃度になるように酸素の添加量が調整されている。外気と酸素は、タービンに入る前にアキュムレーター/ディフューザーにより混合される。このガスはタービンの回転により、吸気ガスやバイアス流となる。タービンは、呼気相でも10LPMの定常流を発生させているが、吸気相ではVCV、PCV、PSVなどの換気モードに応じて回転制御されている。VCVでは標準は漸減波であり、PCV、PSVは気道圧により必要とする流量が変化するので、タービンの回転制御はかなり微妙である。タービン駆動用のモーターは慣性質量の少ない高出力、高回転モーターが使われているが、そのかわりDC48Vという比較的高い電圧を要求する。呼気弁は電磁駆動により呼気弁膜が直接駆動される。異常高圧をリリーフするために過剰圧開放弁が設けられている。リリーフ圧はフロントパネル面よりドライバーで20〜130pH2Oの範囲で設定可能である。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
 フロートリガーが採用されている。標準では10LPMのベースフローがセットされているが、10〜20LPMで設定可能である。
2)ASSIST/CONTROL
 通常のsCMVと同じである。標準では漸減波であるが、AVS以上の機種では、矩形波も選択できる。AVS IIIでは強制換気にVAPS、PCVを選択できる。
3)SIMV
 トリガーウィンドーは可変時間方式である。AVS IIIでは強制換気にVAPS、PCVを選択できる。
4)PSV
 PSVでの吸気終了認識条件はピーク流量の25%である。最大吸気時間は3秒に制限されている。
5)PCV
 PCレベルを設定すると強制換気が圧換気でおこなわれる。ASSIST/CONTROLモードではPCVになり、SIMVモードではSIMV(PCV)になる。いづれの場合でも、換気量の表示(設定値)がインアクティブになり、量換気でないことを示す。PCレベルをOFFにすると量換気に戻る。VAPSを付加した場合は、換気量の表示もPCレベルの表示もアクティブになる。
6)VAPS(Volume Assisted Pressure Support)
 AVS IIIのみ利用可能である。VAPSは、Volume ventilationとPSVを重ね合わせた新しい換気モードである。Bear-1000では制御系が良くないのでこの効果を実感できないが、AVS IIIでは、みごとにこのモードのもつ概念を具現化できている。詳細はII.人工呼吸モードの概念と基本設計 L .VAPSの章を参照。
7)無呼吸バックアップ
 無呼吸時間(Apnea interval)が設定値(10〜60秒に設定可能)を経過すると無呼吸アラームが鳴り、バックアップ換気回数(12回/分もしくは設定換気回数のいづれか大きい方)でAssist/Control方式の換気をする。その後連続して二回自発呼吸が検出し、しかも、呼気換気量が設定一回換気量の50%以上であれば、自動的にアラームが止まり、元の換気条件に戻る。アラーム消音/リセットボタンを押しても元の換気条件に復帰する。
8)SIGH
 吸気フローは同じままで、吸気時間が150%になり、150%の換気量で100呼吸に1回、または、7分ごとに1回(いずれか早いほうが優先)SIGH が入る。また最高Sigh圧アラーム(Sigh pressure limit)は最高圧(Pressure limit)の1.5倍になる。
9)バッテリー駆動
 標準の内蔵バッテリ−で約1時間、オプションの専用バッテリー(DC 48v)で約5時間駆動可能である。
10)データー出力
 RS 232でデーターを出力できる。
11)PEEP補正(PEEP compensator)
 呼気ガス流量にかかわらず、呼気抵抗が最小になるように、また、PEEP/CPAP圧が正確に維持されるように、気道内圧と基準PEEP/CPAP圧との誤差に基づき、サーボ制御により呼気弁の開度を調整する。
6.操作体系(図III-5-15)
 希望の項目を押して選択すると他の数値表示はうす暗くなり、設定待期状態であることを示す。設定ノブを回して希望の数値を入力する。もう一度項目ボタンを押して数値を確定する。設定ノブにロック機構をかけることもできる。PCVレベルを設定すると強制換気がPCVでおこなわれ、一回換気量の設定がインアクティブになり数値表示が消える。VAPSをONにすると一回換気量とPCVレベルの設定値がアクティブになる。
7.モニター、アラーム機能
 以下の項目がある。
(1)高圧(5〜120cmHO)
(2)低ピーク圧(off, 2〜60cmHO)
(3)低分時換気量(0.1〜99.9 LPM)     
(4)過呼吸(off, 3〜150回/分)       
(5)無呼吸(10〜60秒)          
(6)酸素ガス圧異常            
(7)機器作動異常、電源異常、供給ガス圧異常
(8)                   
8.ディスプレー機能(図III-5-16)
 VS,VSO2では、呼気分時換気量、一回換気量、実呼吸数、I:E比、ピーク気道圧、平均気道圧、PEEP圧の項目を、スクロールしながら1項目づつ数値表示できる。AVSでは静的コンプライアンス、吸気時間も表示できる。AVSでは、ディスプレーが大きいので同時に3項目を表示できる。
 AVSにはオプションのHAWKEYEを装備でき、その際には、気道内圧、換気量、流量の内波形をグラフィック表示できる。また、圧/ボリューム、フロー/ボリューム曲線、各種トレンド、全項目の設定値の数値表示、全項目の実測値の数値表示も表示できる。
9.患者回路構成、加湿器(図III-5-17)
 呼気弁とフローセンサーは一体に成型されたハイテクの結晶で、組立分解が容易なだけでなく、呼気弁の応答性やセンサーの精度も優れている。あらゆる視点で評価しても最優秀である。加温加湿器は各社のものが選択できるが、通常はF&P社の製品が添付される。
10.メンテナンス
1)バクテリアフィルター
 フィルターはオートクレイブのみ可能。呼気の流量測定ユニットのセンサーは物理的に強くないが、熱や化学薬品には耐えるので、薬液やオートクレイブによる滅菌が可能である。
2)呼気弁周辺
 呼気弁膜は破損していれば交換する。呼気流量測定ユニットは、数100万サイクルの使用に耐えうる。
11.定期点検
1)500 時間ごと
 エアー入力フィルターを洗浄、滅菌する。。
2)5,000時間ごと
 定期点検を受ける。
3)20,000時間ごと
 オーバーホールを受ける。
12.欠点
(1)酸素濃度調整用のデジタルブレンダーの作動音がカチカチとけっこう耳障りである。
(2)酸素入力圧の許容上限が比較的低いので、酸素配管の圧が高い一部の施設では、レギュレターで減圧する必要がある。
(3)これは欠点ではないが、AVS IIIとVSO2以外にモデルを設定する必要があるのか疑問である。また、AVS IIIが高すぎるのか、VSO2が安すぎるのか、両者の価格差が大きいのは納得しがたい。
(4)患者回路にリークがないのに、グラフィックディスプレーのボリューム曲線の基線が元に戻らなくなることがしばしば認められる。フローセンサーを校正すると解決する。しかし、トリガー感度には影響がないようなので、トリガー機構には強力なドリフト対策が為されていると推定される。
 
 
図III-5-1    Bird 8400STi +Hawkeyeの外観
図III-5-2    チューブレスダイキャスト
チューブの配管によらずアルミの鋳型でニューマティック回路が構成されているので、信頼性が高い。また製造コストが低減した。
図III-5-3    呼気側フローセンサー
バリアブルオルフィス型である。膜の前後の圧格差でガス流量を測定する。
図III-5-4a    吸気バルブ
バルブをステッパーモーターで駆動し流量を調節する。
図III-5-4b    呼気弁駆動部
呼気弁のメンブレンを直接的に駆動するのでレスポンスが早い。
図III-5-5    Bird 8400のニューマティック回路
図III-5-6    フローマッチング
吸気相でも呼気相でも、回路内ガスには絶えず10 LPMの余裕があるので、トリガーまでの吸気仕事量は軽減している。トリガー時には気道内圧の低下が少ない。CPAPでも圧低下が少ない。
図III-5-7    Bird 8400操作パネル
図III-5-8    ディスプレー表示例
図III-5-9    患者回路
図III-5-10    Bird 6400の外観
図III-5-11    Bird 6400のニューマティック回路
図III-5-12    T-BIRDの外観
図III-5-13    フローセンサーと一体化した呼気弁ボディー
ダイアフラムを入れ、呼気弁を押し込んで右に少し回すだけで装着できる。ダイアフラムを逆向きに入れるとリークしてしまい気道内圧がまったく上がらないので注意。
図III-5-14    T-BIRDのニューマティック回路図
極秘のタービン技術によりシンプルに仕上がっている。タービンの詳細は企業秘密である。
図III-5-15    T-BIRDの操作パネル
項目を押して選択し、ダイアルで数値を入力し、もう一度項目ボタンを押して数値を確定する。
図III-5-16    T-BIRDの患者回路
図III-5-17